#レノフィガ エイプリルフール2025の設定、同棲する二人が見えたので幻覚 本編が出てないのに狂いました。全部狂った勢いです。続きを読む「大俳優、二ヶ月の突然の休暇」 簡潔な見出しがネットニュースを騒がせたのは、一昨日のことだった。芸能人であるとはいえ、彼は仕事を休むだけだというのに、小さなニュースになってしまう。週刊誌の見出しが大袈裟に「大俳優、突然の活動休止」と体調不良を仄めかすようなものにならなかったのは、ひとえに彼自身の配信で「ちょっと夏休みを貰おうと思ってね」と気軽な調子でウインクしながら発表されたからに他ならない。 フィガロ・ガルシア。目覚ましいほどの才能と目には見えない膨大な努力で芸能界に輝く名俳優。彼の人がどれだけの忙しさとプロ意識を持って仕事をしているかをレノックスは知っているから、配信の中で覗くいつものように冗談めかした口調に、液晶画面を見ながらほっと一息をついた。 彼の演技はスクリーンの向こうにいる世間からも怪演とも称されるほど人の心を奪ってしまう。隣で見る機会のあるレノックスからすれば、何かしらの対価を払い、禁忌に足を踏み入れているのではないかと勘繰ってしまうほどに。 だから、体調不良だとか、精神疾患だとか、何もなくて安心したというのに。「やあ、レノ。遅かったね」 どうして彼は自分の家の前にいるのだろう。 仕事から自分の家に帰ってきたら、なぜか玄関ドアに背を預けて立つフィガロがいた。夜の十時を回ったところだった。少し考えたあと、とりあえず家に入ろうと、フィガロの肩をゆるく押してのけて、ドアに鍵を差し込んだ。「泊まって行くんですか?」 ノーリアクションはない、とぶつくさ言いながら手慣れた様子で玄関に靴を揃えて、持っている荷物を置いたフィガロに、レノックスは一応確認の体で尋ねた。 ちなみにレノックスがスリッパを用意しない程度にはこの家に彼は来たことがある。演技のアドバイスや擦り合わせに留まらず、二人で酒を飲みながら夜通しテレビゲームをすることもあった。 そんなフィガロが突然泊まることに対して驚きはない。が、荷物がそこそこあることに気がついたレノックスは、あるひとつの推論を導き出していた。 果たしてフィガロは、その推論通りの台詞を言った。「そう。二ヶ月」「…なんでですか?」「気分転換」 あまりにもあっけらかんと言われるので、そういうこともあるのかと納得してしまいそうになるが、何とか頭が反論を思いついた。「二ヶ月間旅行した方が、余程気分転換になると思いますが」「本気で言ってる?いま俺が載ってる広告、街にいくつあると思ってるの」 そう言われると、合理的な気がしてきてしまう。しかしギリギリのところで、再び頭が反論を捻り出した。「俺の部屋に缶詰めより、ホテルに缶詰めの方がいいのでは」「木を隠すならなんとやらだよ」 同業者多いだろうこのマンション、と指摘されて確かにそうではあると頷かざるを得ない。都心から程よい距離で、一応配信環境に耐えうるネット環境があり、治安が良い――この条件を満たすエリアはそう多くない。すると自然と芸能界に関わる人物が入居することになる。 必然、マンションの周辺は著名人たちのプライベートとして、互いに立ち入らない暗黙の了解が敷かれるエリアになる。 納得してきたレノックスの表情にフィガロは笑って、陥落させる一言を言った。「三食作るのと家事はやってあげる」 くぅ、と忙しさで満足できる夕食を食べてないレノックスの腹が控えめに鳴った。 ちなみにレノックスよりフィガロの方が料理は上手い。フライパン捌きが上手いから年の功ですね、と言ったら脚を軽く蹴られたことがある。 ありがとう、決まりね、何がいい?と言いながらキッチンに入っていくフィガロに、野菜スープが冷蔵庫に残っているのでそれで、と声をかけた。 乾燥機に洗濯物を放おったままだったので、片付けようと洗面所に向かう。服を畳みながら、フィガロはどうして二ヶ月もの間休むことにしたのだろう、とレノックスは一人思った。夜遅くまで仕事をしていたおかげで、思考はそこで止まったし、本人に追求もしなかった。 いまレノックスの脳裏にあるのは、後で聞けばいいかという楽観的な考えと、スープくらいは飲んで眠りたいという欲求が大半を占めていた。ひょっとすると、こういうレノックスの楽観的な思考にフィガロはつけ込んでごり押ししているのかもしれない。そうだとしても、レノックスにはどうしようもない。 色々考えても結局、液晶画面越しよりかは少し疲れているように見えた彼が、ひとときでも癒されるなら、と思ってしまったからだ。 片付けを終えて野菜スープをフィガロから受け取ると、言うまでもなく味付けは変わっていた。 塩味が効いていて、とても美味しいものだった。 2025.4.1(Tue)
「大俳優、二ヶ月の突然の休暇」
簡潔な見出しがネットニュースを騒がせたのは、一昨日のことだった。芸能人であるとはいえ、彼は仕事を休むだけだというのに、小さなニュースになってしまう。週刊誌の見出しが大袈裟に「大俳優、突然の活動休止」と体調不良を仄めかすようなものにならなかったのは、ひとえに彼自身の配信で「ちょっと夏休みを貰おうと思ってね」と気軽な調子でウインクしながら発表されたからに他ならない。
フィガロ・ガルシア。目覚ましいほどの才能と目には見えない膨大な努力で芸能界に輝く名俳優。彼の人がどれだけの忙しさとプロ意識を持って仕事をしているかをレノックスは知っているから、配信の中で覗くいつものように冗談めかした口調に、液晶画面を見ながらほっと一息をついた。
彼の演技はスクリーンの向こうにいる世間からも怪演とも称されるほど人の心を奪ってしまう。隣で見る機会のあるレノックスからすれば、何かしらの対価を払い、禁忌に足を踏み入れているのではないかと勘繰ってしまうほどに。
だから、体調不良だとか、精神疾患だとか、何もなくて安心したというのに。
「やあ、レノ。遅かったね」
どうして彼は自分の家の前にいるのだろう。
仕事から自分の家に帰ってきたら、なぜか玄関ドアに背を預けて立つフィガロがいた。夜の十時を回ったところだった。少し考えたあと、とりあえず家に入ろうと、フィガロの肩をゆるく押してのけて、ドアに鍵を差し込んだ。
「泊まって行くんですか?」
ノーリアクションはない、とぶつくさ言いながら手慣れた様子で玄関に靴を揃えて、持っている荷物を置いたフィガロに、レノックスは一応確認の体で尋ねた。
ちなみにレノックスがスリッパを用意しない程度にはこの家に彼は来たことがある。演技のアドバイスや擦り合わせに留まらず、二人で酒を飲みながら夜通しテレビゲームをすることもあった。
そんなフィガロが突然泊まることに対して驚きはない。が、荷物がそこそこあることに気がついたレノックスは、あるひとつの推論を導き出していた。
果たしてフィガロは、その推論通りの台詞を言った。
「そう。二ヶ月」
「…なんでですか?」
「気分転換」
あまりにもあっけらかんと言われるので、そういうこともあるのかと納得してしまいそうになるが、何とか頭が反論を思いついた。
「二ヶ月間旅行した方が、余程気分転換になると思いますが」
「本気で言ってる?いま俺が載ってる広告、街にいくつあると思ってるの」
そう言われると、合理的な気がしてきてしまう。しかしギリギリのところで、再び頭が反論を捻り出した。
「俺の部屋に缶詰めより、ホテルに缶詰めの方がいいのでは」
「木を隠すならなんとやらだよ」
同業者多いだろうこのマンション、と指摘されて確かにそうではあると頷かざるを得ない。都心から程よい距離で、一応配信環境に耐えうるネット環境があり、治安が良い――この条件を満たすエリアはそう多くない。すると自然と芸能界に関わる人物が入居することになる。
必然、マンションの周辺は著名人たちのプライベートとして、互いに立ち入らない暗黙の了解が敷かれるエリアになる。
納得してきたレノックスの表情にフィガロは笑って、陥落させる一言を言った。
「三食作るのと家事はやってあげる」
くぅ、と忙しさで満足できる夕食を食べてないレノックスの腹が控えめに鳴った。
ちなみにレノックスよりフィガロの方が料理は上手い。フライパン捌きが上手いから年の功ですね、と言ったら脚を軽く蹴られたことがある。
ありがとう、決まりね、何がいい?と言いながらキッチンに入っていくフィガロに、野菜スープが冷蔵庫に残っているのでそれで、と声をかけた。
乾燥機に洗濯物を放おったままだったので、片付けようと洗面所に向かう。服を畳みながら、フィガロはどうして二ヶ月もの間休むことにしたのだろう、とレノックスは一人思った。夜遅くまで仕事をしていたおかげで、思考はそこで止まったし、本人に追求もしなかった。
いまレノックスの脳裏にあるのは、後で聞けばいいかという楽観的な考えと、スープくらいは飲んで眠りたいという欲求が大半を占めていた。ひょっとすると、こういうレノックスの楽観的な思考にフィガロはつけ込んでごり押ししているのかもしれない。そうだとしても、レノックスにはどうしようもない。
色々考えても結局、液晶画面越しよりかは少し疲れているように見えた彼が、ひとときでも癒されるなら、と思ってしまったからだ。
片付けを終えて野菜スープをフィガロから受け取ると、言うまでもなく味付けは変わっていた。
塩味が効いていて、とても美味しいものだった。