監督に求めていたものはそこに 映画「君たちはどう生きるか」感想

早起きをして映画館へ並び、昼前に終わったのでブックオフで本を買い取りしてもらってからおにぎりを買って帰りそれを食べながらこの記事を書いています。これ書いたら小説を書いて絵を描いて仕事をして寝る予定です。す~ごい健康で文化的な生活を送っている。さて、抜粋のネタバレも気にしなくて良い程度には字数稼ぎができたので感想に入ります。

この映画を何故見ようと思ったか

監督は世界名作劇場とかで延々絵コンテ・画面構成をしてきただけあって、おそらく画面構図は常に一級のものが見られるだろうと踏んで観ました。
べつに説教されてもいいよと思ってた。

あとメビウス「アルザック」みたいな画がワンチャン観れるかもしれない期待と、サン・テグジュペリが好きならそんなにめちゃくちゃな話にならないだろうという確信。

感想を一言で

だいたい予想通り、求めていたものは観れたので満足です。

宮崎駿、構図がめちゃくちゃ上手いんだよな…(あたりまえ体操)

全編に渡って正解しかなくなかったですか?いや演出とか画面構図はずぶの素人なんですけど、それでもわかるほどってやっぱり監督すごいなあって思います。

世界観をぐちゃぐちゃに混ぜてもなお破綻した絵面がないのがすごかった。「あれだけ世界中の話の画面構成を何千枚としてきたのはたぶん宮崎駿監督ぐらいしかいない」と言われるだけある。教科書に載りそう(そんなものができたらほしい)。

最も好きだったのがキリコさんの帆を上げながら風を受けて船を進ませるシーン。気持ちがいいほどに美しかった!あのワンカットで映画代は元取ったな~!と思いました。

混ざりあう世界について

引退中に作ったらそりゃそういう作品になるよな~…という感想です。おかげで大混乱だよ。

いや戦時下で生きる少年の話かと思ってましたが初っ端「そういう世界の混ぜ方、アリなんだ!?」って驚きました。監督的に。

混乱はありましたが、「アッ!これメビウスみたいな画面が見れるぞ!」って歓喜のほうがでかかった(それもそれでどうなんだ)。そしてマジで観れたのでプラマイプラでしたかね。あの海の色合いと空のグラデーションの調和、ほんとに好きです。

現実世界を戦時下にする必要性はあったのだろうかと思いはしました。「争い」は常日頃、それこそ戦争してなくてもあるものなので。監督プロペラ機好きだったから風防を描くためだったと言われてもちょっと納得しちゃうんですが、たぶんこれ宮崎駿が生まれた年に関係してるのかな。

物語はどうだった?

思ったよりも説教されなかった。

たぶん物語全体を通してみると一番近い構造が「千と千尋」だと感じます。不思議な世界に迷い込む主人公がそこでそこのルールのなか生きて、それから変わらぬあるいは少しだけ変わった日常へ帰っていく、みたいな。劇的な結末にはならないけど、そういった話は日本的で好きです。

たまに見たくなるけれどそんな話は売れなくなったので昨今あまりなく(あったとしてもどうしてもスケールが小さい)、そういった話をまだやってくれるところに有難さは感じます。

ひとつ言うとするならば、説明過多になったなと感じます。
説明したくないんだったらもっと説明を省いて、正確に伝えたいならもっと説明してほしいと言ったほうがいいかもしれない。

例えばハウルでサリマン先生の魔法にかけられて精霊の歌を聞かされるシーンがありますが、今の監督だったら「自殺を促す歌だ、気をつけろ」って台詞を付け足しそうだなと思いました。個人的にはない方が好みです。

本編の中でいうとキリコさんが白い子たちを「人間になるんだよ」って教えたり、案内人が喋るようになったりってところでしょうか。
良くも悪くも、というところですね。わかりやすいんですけど。

それだけ作品のテーマを強く伝えたかったのかもしれない。

「君たちはどう生きるか」

だいぶ前に原作の方を読んだんですが、具体的なエピソードは粉ミルクから始まる「網目の法則」しか覚えてない人です。いやまあ、全体通したあらすじも言えるっちゃ言えるけどうろ覚え…なので…言及は避けます。

主人公が粉ミルクを手にするまで、作ったり取引をしたり運搬したりと膨大な人が関わっていながらも主人公と顔を合わせることはなく、まるで網目のように世界は繋がっている。そういうのが「網目の法則」です。

映画もそういったことを感じました。どう生きるかというより、歴史の積み重ねでいまを生きているとか、選択の積み重ねで生きているとかの方を感じた。

あと他の人の感想を見始めたんですが、ラストに対して平和へのメッセージとも創造へのメッセージとも取っている人がいておもしろいですね。自分は後者です。

あなたの世界は、世界から拾った石を積んでできている。石とは経験であったり、美しいと思ったものだったり、その積み重ねがあなたの世界になっていく。

あえて言うならこのあとに「その石をどう選び、どう積むか。君たちはどう生きるか」に繋がるのかな。
作品自体もそんな作りだった(宮崎駿が経験してきたり影響を受けてきたものの断片をみた)ので。

米津玄師、すご

物語の中で出てきてないフレーズでこの「君たちはどう生きるか」を表現しろって言われたときに「地球儀」って出てくるのやばくないですか?打ち合わせもしたでしょうが…青いエンドロールにぴったりでした。

結論

観てよかったです。心が豊かになった!